こんにちは。紫藤かもめ @shidokamo です。
筆者は投資を趣味として、暗号通貨のことばかり考えているのですが、先日ゴールドが連日史上最高値を更新する空前にブームに乗って、金の現物を買ってみました。 その際考えたことを、デジタルゴールドと呼ばれるビットコインと絡めて雑多に記しておきたいと思います。
以下で 「金」 と書いてあるのは全て 「ゴールド」 の意味です。
金貨を買った
結論から言うと、今回買ったのは 1 oz(オンス)金貨です。現在の相場だとざっくり50万円くらいします。
1オンスというとアメリカ人が未だに使っているあの良くわからん単位で、1オンスは1/16ポンドだから、大体28グラムくらいか………と思わせてこの金貨は31.1グラムです。 アメリカ人が普段クッキングなどで使っているヤードポンド法の oz (オンス) ではなく、 貴金属の計量にだけ使う「トロイオンス」という全く別の単位なんですね。 ちなみにオンスには更に液量オンスという体積を測る全く別のオンスもあります。(しかもアメリカとイギリスで定義が違います。)
相変わらずヤードポンド方はクソだなという怒りが頭の中に舞い上がりますが、 おそらく各地でオンスという単位が統一されていなかった古の時代の名残が、 何百年という歴史のある金の測量系には残っているということなのだろうと好意的に解釈することにしました。
投資用の金貨
金貨全くわからん勢だったわたしが今回ざっくり調べたことをここにまとめておきます。
- 金投資熱の高まりとともに金含有量の高い金貨が売り出されるようになったものを Bullion Gold Coin (地金型金貨) という。
- 金貨には地金の価値に対してプレミアムが付いている。要は各国政府が金を加工して若干のプレミアムを付けて販売している。貨幣鋳造による各国国家の利益追求的な側面が少々ある。
- プルーフ貨幣という特別に美しい加工と装丁をしたものは特にプレミアムが大きい。
- 造幣局が正式に発行した法定通貨として決済に使える場合が多い。(もちろん私鋳を防ぐために法定通貨としての額面は地金である金の価値よりも非常に安い額面になっている。10万円金貨?なんのことか分かりませんねえ。)
- 大まかに言って、金の含有量が99.99%程度の純金製のコインと、金の含有比率を90%程度に抑えて硬度を高めた合金のコインの二種類がある。後者は金自体は1トロイオンス含まれていて、その他の金属と合わせてトータルの重量が1トロイオンスより重い仕様。
- 合金のコインの方が買取価格が落ちる傾向がある様子。基本的には純金が人気の様子。
- 1オンス以外にもハーフオンスやらの色々な重量があり、金以外に銀やプラチナでも発行されたりする。
十万円金貨事件
天皇陛下御在位六十年記念で純金金貨が発行されたが、地金の価値4万円ほどで日本円として通用する額面10万円の金貨を発行するというあり得ないミスを犯し、日本円が密造されまくった事件。4万円の金で、10万円のお金が作れるんだから反社なら誰でもやるでしょそんなの………
はるか古の皇朝十二銭のころから貨幣の歴史は私鋳の歴史と表裏一体なのにどうしてこうなった………?
(ここに「まるで成長していない・・・・・・」の画像を貼る。)
主な金貨
金は金なんだから、Au さえちゃんと入っていれば勝手鋳造でもどの金貨でも一緒や!と思わせて、ちゃんと流通市場がある金貨は全部各国の造幣局(Mint)が正式に発行したもの。
なので以下にあげる代表的なコインは全て各国で法定通貨として決済にも使える。
金の現物には偽造の問題が常に付きまとうので、国家による権威付けが必要になってくるという点がビットコインとは違って面白いところ。
- クルーガーランド金貨
- 南アフリカ発行のかつての覇権金貨。1967年から。合金。反アパルトヘイト運動で没落した。(南アフリカはかつて金の一大産地だった)
- メープルリーフ金貨
- カナダ発行の金貨。1979年から。純金。現在世界で一番人気がある。
- ウィーンフィルハーモニー金貨
- オーストリア発行の金貨。1989年から。純金。世界で最も売れている金貨のひとつ。
- パンダ金貨
- 中国発行の金貨。1982年から。純金。2016年から 1 トロイオンスではなく、SI単位系に切り替えて1枚30グラムで発行されるようになった。偉い。
- アメリカンゴールドイーグル金貨
- 米国発行の金貨。1986年から。合金。アメリカ産の金を使わなくてはいけないと法律で義務付けられているのでトランプ信者も安心。
- アメリカンバッファロー金貨
- 同じく米国発行の金貨。2006年から。こちらは純金。同じくアメリカ産の金を使用。リーマンショックの際はあまりの人気の高まりに販売停止されたこともあるらしい。
- オーストラリアゴールドナゲット金貨(カンガルー金貨)
- オーストラリア発行。1986年から。ゴールドナゲットというのは金塊のこと。かつては金塊がデザインされていたが、よりオーストラリアらしさを出すために図柄がカンガルーに変わった。
- ちなみに銅のナゲットとか土産物屋で売ってるのみたことある。鉱物マニアを最初ターゲットにしたけど、カンガルーには勝てなかったらしい。
- ブリタニア金貨
- 英国発行の金貨。1987年から。2013年からは純金。それまでは合金。ブリタニアというのは英国を象徴する女神のことでございます。
こうしてみると金投資ブームが起きた80年代に争うように多くのコインが発行開始されたものと思われますね。
ここ数年は金の高騰も相まって発行枚数が一段と増えているようです。 そのうちもっと幅広い小売店で流通するようになったりしたら面白いですけどね。
ちなみに、法定通貨ではないものでは暗号通貨の模様が入った金貨なんかも売ってたりしますよ。 ビットコインの模様が入った純金金貨ってどういうアイデンティティなんだ……?というのが面白かったです。
糞コインたちの純金コインとか誰が買うのでしょうか、、、
この金貨は本物なのか?
まず金の現物を買うぞとなってまず考えたことは、真贋を見抜くのむじいな……… ということです。 タングステンとか金と比重ほぼ一緒ですからね。素人には厳しい世界。
ガチの非破壊検査には蛍光X線分析装置、もう少し手軽なものだと抵抗率の測定をする金貨検査機などを使うようですが、 金貨を1、2枚買うのにそんなの使ってられないわけです。
結局、リテイラーをトラストする というところに依存するしかないのです。 「頼む、本物の金貨であってくれ、、、」 という情けない状況。
これがビットコインだったら、少なくとも本物のビットコインが手に入ったかどうかは、ノードに問い合わせるなり、簡易的にエクスプローラを使うなり、ごく簡単に検証できるわけです。そういった点ではやはりビットコインは凄い。
あーちなみにビットコインだって取引所で買っても、そんなもの証明にも何にもなっていないのですからね。 出金してちゃんと自分のウォレットにビットコインが入金された後の安心感は段違いということでございます。 俺は本物のビットコインを持っているぞ!モーメントがそこには確かに存在しているんでございます。
ビットコインは偽造出来ないとか口で言っていても金と比べてみるまでは実際はよく分かってなかったです。
逆にいうと取引所にビットコイン置きっぱなしの人はこの利点を殺してるんですよね。 とはいえ、シードフレーズは平均的な人間には扱うのが難しすぎるので取引所に置いておいた方が良いケースも多いと思ってますが。 でもまじで口座凍結とか結構カジュアルにされる治安の悪い世界だからガチで気をつけた方がいいですよ。
個人情報問題
リテイラーをトラストする問題は他にもあって、多くの場合取引時に相手に個人情報を渡さざるを得ないんですよね。 つまり金を持ってるやつリストに自分の個人情報が載ってしまうんですよ。これは大問題ですね。 またまた相手をトラストするしかないという状況。 まあ今回のように金貨1枚、2枚買ってみたくらいなら個人情報も別にそこまで気になりませんがね。
もちろん匿名で買えるようなルートは基本は論外なわけですが、 いまのところ 金に関しては身分証なしで200万円以下は大手のリテイラーの店頭で現金で買えたり します。 でかいインゴットを買うぞとかなると購入履歴が相手に残るのはかなりリスクあるよなあと思います。ちょっと厳しいです。
これは本質的には暗号通貨取引所も一緒ですね。今まであまり気にしてなかったけど そのうち取引所から大規模な個人情報流出とかもありそうで怖いですね。
とかなんとか上記はしばらく前に書いた記述だったんですが、最近は証券会社の不正ログイン事件で被害額3000億円突破だそうで、 やはり個人情報問題は大きな課題だなと思いました。
金現物を店頭でちまちま現金で買っていくのもありですね。
とかなんとか言っていたら更に今度はCoinbaseから住所と残高情報が流出だそうで。 ハッカーが従業員を買収して個人情報を取得して、それを元に身代金を要求しているとかなんとか。 まー、やっぱりそうなりますかって感じですね。
https://x.com/shidokamo/status/1923187612602314763
金貨の魔力
で、実際に金貨を手にしてみるとその魔力みたいなものはなかなか凄いです。
まあ創作とかで散々擦られてる奴ですからね。ビットコインと違って作り手の温もりがあります。 というのは半分冗談としても、実際作ってるやつも買ってるやつも割とマニアな世界ですし、 歴史もあるわけで物理的な現物が手元で煌めく魅力はあります。
金って化学物質として超安定しててこの輝きが半永久的に続くんだよなあとか、 宇宙のどこかで超新星爆発で生まれた金が隕石となって地球に降り注いだものが地球の金の起源と言われているんだよなあとか科学的なロマンもあるわけですよ。
例えば仮に将来、子孫に資産を受け継ぐとなったときに、大抵の人は金貨をもらった方が嬉しいのでは? 暗号通貨はイメージ悪すぎるんで、ビットコインなんてもらっても困る、、、 と言われちゃったりしそうですが、金貨のずっしりした重みはめちゃくちゃ喜ばれそうです正直。女性とかだったら特に。
銀貨はアルトコイン
銀貨も各国の造幣局から盛んに発行されていますが、これはちょっと厳しいですね。なにせ銀は値段が低すぎます。 10kgの銀を買っても200万円にもならないです。
逆に大量のコインが欲しいんだとなれば銀貨ですね。1オンスの銀貨が1枚1万円以下で買えます。 この辺りの金と銀の関係は、ビットコインとアルトコインの関係に近いですね。
ただ、こっちとしては最悪の想定で有事の際のことなどを考えて金の現物を手元に持っておこうとしている中で kg単位とかだとちょっと物理的な圧が強すぎるよって感じです。
税金
ビットコインは税金が高い高いと言われていますが、それに比べて金は優遇されています。
現物の金の売却益は、譲渡所得として総合課税で申告するように通達されています(事業や営利でやってたりすれば別)。土地とかと同じですね。
この譲渡所得って、5年以上の所有期間があると譲渡所得を半分にできるんですよ。 つまり5年ガチホすると単純に住民税も含めて税金が半分以下になります。狂ってるだろ。
具体的にこんなケースで税金を計算してみます。 話を簡単にするために僕がニートで、昔買った金貨を売って生計を建てているとします。 手元に、今年の1月1日から数えて5年以上前に100万円で買った金貨があります。 極端に利益が出たケース として今では日本円がめちゃくちゃ値下がりしてこの金貨を1000万円で譲渡する事が出来たとします。
まずは、譲渡益が 1000万円 - 100万円 = 900万円です。
譲渡所得の特別控除50万円があるので、譲渡所得は、900万円 - 50万円 = 850万円です。
ここで、所有期間が5年を超えるので、課税される金額は 850万円 / 2 = 425万円 です。
425万円の所得税の税率は20%です。所得控除は427500円なので、課税所得は 425 - 42.75 = 382.25万円。
単純に他の控除や細かい税がなにもないとすると、復興特別税、住民税を合わせて900万円の譲渡益に対する税額の概算は
382.25万円 * (0.2 + 0.021 + 0.1) = 約122万円
まあ要はビットコインの場合と計算はほぼ同じなんですが、長期保有の場合の優遇措置がデカすぎます。 仮に3500万円の譲渡益が出ても、この長期保有措置がすべて適用できれば課税所得は1700万円程度になり、 税率は最高税率の2つ下の所得税率33%カテゴリに入り、税金は700万円行かないくらいに収まります。
ビットコインがもし譲渡所得扱いだったら5年ガチホが推奨されて結果的に爆益でみんなハッピーだったなあとか。
ちなみに、アメリカだと金現物の税金は一律で28%だそうです。高いですね。(なぜか金のインゴットも金貨も美術品と同じ扱いとなり、シンプルに常に28%の税金です)
あと、日本でもETFで金を扱う場合はこんな面倒な計算は必要なくて分離課税です。
金貨はセミファンジブル
税金について考えているときに思ったのですが、金貨や金のインゴットってややノンファンジブルですね。 もちろんどの金貨も規格化されていて代替可能ではあるのですが、ひとつひとつを区別して売却することができます。
調べるとこういうものはセミファンジブルとかいうらしいです。
つまり金貨は税金の計算が楽なんですよ!総平均法だとか移動平均法だとかそんな面倒なことを考える必要はありません。 何年何月に何円で買った金貨を何円で売ると考えることができるんですね。
金貨は分割が出来ない
実際は分割できるんですよ。純金は特に柔らかいし。しかし、実際問題一部を売ろうといって金貨を1/4に割ったり削ったりするやつはまあいないでしょう。 そんなことをするとかなりの価値を棄損しますからね。
一部を売るみたいなことが難しいのは明らかにデメリット、、、と思わせて実際は先ほどの税金の計算が楽ってところにつながっているので一概には言えないですが、 やはりいくらでも分割可能というビットコインの性質は素晴らしいものだと実感しました。
金の現物には消費税がかかる
よく言われてるやつですが、金を購入するときに消費税を払う必要があり、売却時に消費税分の上乗せがあります。 つまり、外国から金貨を持ち込んで売却すると消費税10%アビトラが出来ます。 逆に日本国内で買った金貨を海外に持ち出すとめちゃくちゃ損します。
クソオブクソですね。
こんな馬鹿な制度のせいで日々、金の密輸検査に追われる税関職員のことを思うと涙が止まりません。これは冗談ではなく。 金が高値を付けるとやはり密輸が激増するそうです。
10万円金貨の件と言い、江戸時代末期にメキシコ銀貨の持ち込みで金が大量に流出した件と言い、どうも日本人は金の扱いがうまくないのかもしれませんね。
まとめ
ビットコインも金もいいぞ。
こぼれ話
金の現物を買おうと思ったそもそものきっかけをたどって見ると、数年前のちょっとした個人的体験にいきつくことに気付きました。
その時俺はコロラドのスキー場にいたんですが、ビレッジと呼ばれる麓の村を歩いていたときのこと。 隣に白いベンツのSUVが停まって恰幅のよい一見すると身なりの良いインド人が何やら声をかけて来ました。 話を聞いてみると、フロリダ(車で20時間くらいかかりますわ)から来たんだが財布をなくしてしまってどうにもならない、ついてはこの金のネックレスをあげるからお金を助けてくれないかということでした。 車の後部座席には赤ちゃんがカーシートに乗り、その横に英語の分からない老婆のような女性がこちらを拝んでいました。
男は本物の金である証明だとか言って、ずっしりしたネックレスを握らせて、金は柔らかいから削れるんだと言ってご丁寧にナイフでネックレスを削るのでした。
まあどう考えても詐欺です。なぜかスマホは持ってましたしね。 そもそもスキーもしないような様子なのにこんな山の中に来ている意味が分かりません。 飛行機で来たのか?とか聞いてもいまいち要領を得ませんでしたし。
こちらとしては赤ちゃんに免じてネックレスはいらないからと言って40ドルくらいあげたんですが、 しつこくそれじゃ足りないからもっとよこせなどと言って来る始末でした。 (こういう人にお金をあげたことが何回かあるんですが、感謝の言葉などはなく必ずもっと寄越せと言ってきます)。 最終的にはなぜか俺を悪人を見るような目で見て去っていったので、やはり詐欺だったか、、、と確信したというこんな経験をしたんですね。
それで本題は、その時俺が悔しかったのは、金のネックレスを出された時に呑まれてしまったんですね。相手の舞台に載せられてしまって。
なにしろ純金の現物を見たことも触ったこともないもんで、そんなものをいきなり出されてもどう対応したらいいか判断に迷ってしまいました。 そもそも仮にネックレスが純金だった場合の推定価値もなにも分からないような始末で。 そのあたりが妙に悔しくて自分の中で課題としてどうも心の中に残っていたので、無意識に金の現物を買ってみようという判断に繋がっていたようです。
また、なんとなく戦中戦後の混乱期にはこんなやり取りがガチで命のやり取りとしてあったんだろうなあと思ったりして、 そういうオプションも意識させられた良い経験でした。